明治期を中心として自在置物および自在置物と思われる作品の博覧会、展覧会などへの出品記録をまとめてみました(暫定版につき適宜加筆修正していく予定)。
pdf版も作成しました。こちらも随時更新する予定です。
- 板尾新次郎の1900年パリ万国博覧会出品、高瀬好山の大典記念京都博覧会出品作品について更新(2018/02/20)。
- 第三回内国勧業博覧会出品の加藤甚之助「牙製伸縮蝦置物」追加 (2019/09/10)。
- 第五回観古美術会への松尾儀助による出品「明珍作鐵人物置物」、第六回観古美術会の鈴木長吉出品「銕製鷲置物」追加(2019/11/04)。
-
第三回観古美術会への工商会社による出品「鐵製螳螂置物」「銅製蟹置物」追加(2019/11/05)。
- 明治22年日本美術協会美術展覧会の松井忠兵衛出品「鐵蟹置物 傳云明珍作」追加(2020/05/17)。
- 明治13年観古美術会への亀井茲監出品「鐵造蝦蟆文鎭 明珍吉久作」追加(2022/01/29)。
- 明治24年京都美術協会 九月陳列会 富岡鉄斎蔵「鉄製小蟹明珍作 追加(2022/01/31)。
- 明治25年京都市美術工芸品展覧会 銕製蟹置物 富木治三郎出品 追加(2022/01/31)。
- 明治36年豊公遺物展覧会 鐵製龍置物 明珍信政作 大利鹿蔵出品 追加(2022/01/31)。
- 明治19年第七回観古美術会 銅製海老置物 澤田銀次郎 出品 追加(2022/02/01)。
(Last updated: 06 Feb. 2021)
明治13年(1880)
観古美術会
・亀井茲監 出品
鐵造蝦蟆文鎭 明珍吉久作
『観古美術会聚英 解説』(博物局 明治13年)
「四足機ヲ以テ屈伸ヲナス」
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/995258/93
明治15年(1882)
第三回観古美術会
・工商会社 出品
鐵製螳螂置物
銅製蟹置物
『第三回観古美術会出品目録 第三号』(有隣堂 明治15年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849464/32
これらの出品とは別に、5月24日の明治天皇の行幸に際し龍池会から「明珍作鐵製蟹置物」
が献上された。
宮内庁編『明治天皇紀 第五』(吉川弘文館 1971年)
明治16年(1883)
第四回観古美術会
・松平確堂 出品
明珍作鐵屈伸龍文鎮
『第四回観古美術会出品目録 第二号』(有隣堂 明治16年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849465/22
自在置物ではないが、松平茂昭により明珍吉久作とみられる「明珍魚鱗具足」も出品されている。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849465/26
明治17年(1884)
第五回観古美術会
・松尾儀助 出品
明珍作鐵人物置物 二個
『第五回観古美術会出品目録 第二号』(有隣堂 明治17年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849466/16
自在置物である可能性は低いと思われるが、起立工商会社社長であった松尾儀助による出品である
ことが注目される。
明治18年(1885)
ニュルンベルク金工万国博覧会
・斎藤政吉 出品
「四支活動スル銅製鐵製ノ海蝦及ヒ鐵製蟷螂」
金牌授与
*『金工万国博覧会報告』による
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/854110/16
第六回観古美術会
・鈴木長吉 出品
銕製鷲置物 自作
竜池会編『第六回観古美術会出品目録 第三号』(有隣堂 明治18年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849466/54
自在置物であるかは不明だが、明治22年日本美術協会展覧会への鈴木長吉による龍の自在置物とみられる作品の出品を鑑みて記す。
明治19年(1886)
第七回観古美術会
・澤田銀次郎 出品
銅製海老置物
『第七回観古美術会出品目録 第二号』
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849467/26
澤田銀次郎は明治21年の日本美術協会展覧会に「牙刻伸縮鰕」を出品している。
明治21年(1888)
日本美術協会 明治廿一年美術展覧会
・松平茂昭 出品
鋼銕製伸縮龍 一個
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849734/40
・松平直徳 出品
鐵鳳凰置物 明珍作 一個
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849734/25
・益田孝 出品
明珍作鋼鐵伸縮海老 一個
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849734/41
松平茂昭、松平直徳がこのとき出品したとみられる龍、鳳凰の写真が「東京国立博物館
所蔵 古写真データベース」の『美術会列品写真帖』で確認できる。
鉄製伸縮龍
http://webarchives.tnm.jp/infolib/meta_pub/G0000002070607HP_4089
伸縮鳳凰
http://webarchives.tnm.jp/infolib/meta_pub/G0000002070607HP_4108
・澤田銀次郎 出品
牙刻伸縮鰕 一個
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849734/74
『明治廿一年美術展覧会出品目録 新製品 第五号』
出品人澤田銀次郎は貿易商。牙刻とあるとおり金工ではなく牙彫の自在置物とみられる。
明治22年(1889)
一月十九日、日本美術協会列品館における同会の常会
・山東直砥 出品
鐵製龍置物 一個
古製品、新製品の別は不明。
当年の発会および有栖川宮殿下御臨場とのことで多数の美術品の出品があった。
『日本美術協会報告』(14号 明治22年)
日本美術協会 明治廿二年美術展覧会
・鈴木長吉 出品
鐵製紳(ママ)縮大龍 一個
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849736/81
・松井忠兵衛 出品
鐵蟹置物 傳云明珍作
『明治廿二年美術展覧会出品目録 古製品 第三号』
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849736/40
明治23年(1890)
日本美術協会 明治廿三年美術展覧会
・伊達宗城 出品
明珍作龍文鎮 一個
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849735/5
『明治廿二年臨時美術展覧会目録第壱號』に記載されているが、1、2号は『明治廿二年臨時美術展覧会目録』として明治22年11月、3-5号は『明治廿三年美術展覧会目録』として翌明治23年に発行されており、明治23年の美術展覧会への出品とみられる。
第三回内国勧業博覧会
・加藤甚之助
牙製伸縮蝦置物
褒状授与
『第三回内国勧業博覧会褒賞授与人名録』(内国勧業博覧会事務局 明治23年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801912/92
金工ではなく牙彫の作品。
「伸縮自在、著色真ニ擬ス、牙材ニシテ此作アルヲ嘉ス」「加藤氏ノ蝦ハ鉗足共ニ働キ鐵
ニ比スレバ其工易カラズ」
『第三回内国勧業博覧会審査報告 第二部』(第三回内国勧業博覧会事務局 明治24年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801901/30
明治24年(1891)
日本美術協会 美術展覧会春季展
・・山東直砥出品 工人 和歌山縣板尾新次郎
「鐵製架鷹置物」
銀牌受賞
『日本美術協会報告』(41号 明治24年)
「明珍ノ遺意ヲ襲フ精熟ノ域ニ達シ鷙鳥ノ眞ヲ寫シテ鐵羽将ニ翔ラントス近日未タ
其類ヲ看サル所ナリ」
『絵画叢誌 第五十巻』(明治24年)での作品呼称は「屈伸自在なる鉄製鷹の置物」。
下村英時「奇工板尾新次郎伝--恐るべき伝統技術の闘争史」の記述では
「鷲の置物」が山東直砥による出品で銀牌受賞とされており、同一作と思われる。
東京文化財研究所編『近代日本アート・カタログ・コレクション 017 日本美術協会
第2巻』ゆまに書房 2001年 所載『明治廿四年美術展覧会出品目録』(第一から第四)
には出品記録が見られない。
・野口淸次
素銅製屈伸蝦置物 自作
褒状一等
『日本美術協会報告』(41号 明治24年)
「尾ヲ揮ヒ脚ヲ動シ伸縮自在巧緻観ルベク銅色モ亦眞ニ逼ラントス」
・佐野常民 出品 (古書画器物之部)
鐵製屈伸蟹鎮紙 一個
東京文化財研究所編『近代日本アート・カタログ・コレクション 019 日本美術
協会 第4巻』ゆまに書房 2001年 所載『明治廿四年美術展覧会出品目録 第四』
京都美術協会 九月陳列会
・富岡鉄斎蔵「鉄製小蟹明珍作」
『京都美術雑誌』(2号 明治25年)https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849474/36
明治25年(1892)
日本美術協会 明治廿五年美術展覧会
・川口與兵衛 出品
鐵製龍置物 一個
(古製品としての出品)
東京文化財研究所編『近代日本アート・カタログ・コレクション 018 日本美術協会
第3巻』ゆまに書房 2001年 所載『明治廿五年美術展覧会出品目録』
京都市美術工芸品展覧会
・銕製蟹置物 富木治三郎出品 四等賞受賞
「富木治三郎」は、おそらく高瀬好山工房の工人冨木一門で宗信と称した冨木次三郎であろう。
『京都市美術工芸品展覧会審査報告』(博覧協会 明治25年)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849471/39
明治26年(1893)
一月二十一日 日本美術協会列品館における同会の常会
・「板屋(ママ)新次郎作練鐵製鷲置物一個」斎藤政吉出品
『日本美術協会報告』(62号 明治26年)
同文献巻末に作品図版掲載。「板尾新次郎作」となっておりシカゴ万国博覧会出品作
とみられる。
日本美術協会明治廿六年春季美術展覧会
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849445/23
・松平康荘 出品
鉄伸縮龍 明珍作 二個
鉄伸縮鰕文鎮 (同) 同
シカゴ・コロンブス万国博覧会
・板尾新次郎
鉄製鷲 斎藤政吉 出品 (第九十三部)
『官報』第三二三三号 明治27年4月13日
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2946497/6
受賞人名に「鉄製鷲其他美術金属器」の出品人
斎藤政吉の名が確認できる。
明治27年(1894)
日本美術協会明治廿七年春季展覧会
・板尾新次郎
鐵製海老置物 山東直砥 出品
三等賞銅牌
『日本美術協会報告』(77号及び78号 明治27年)
下村英時「奇工板尾新次郎伝--恐るべき伝統技術の闘争史」にも記述あり。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40000021375
東京文化財研究所編『近代日本アート・カタログ・コレクション 019 日本美術協会
第4巻』ゆまに書房 2001年 所載の『明治廿七年春季美術展覧会出品目録 上』には
山東直砥出品「鐡製屈伸蝦置物 一個」の記載のみで作者名は記されていない。
なお、以下の文献では板尾新次郎の屈伸自在鉄製鷹置物をこの展覧会での二等賞銀牌
受賞作としているが、上記『日本美術協会報告』では本作の受賞記録はない。
『日本美術画報 初編巻五』(1894年10月25日)
http://www.tobunken.go.jp/materials/gahou/108946.html
明治28年(1895)
第四回内国勧業博覧会
・板尾新次郎
銀鎚鸚鵡置物
妙技三等賞
『第四回内国勧業博覧会審査報告』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801947/70
「板尾新次郎ノ鸚鵡ハ特殊ノ工作ニシテ生禽ヲ飼養シ其活動ノ状ヲ寫ス頭嘴或ハ俯シ
或ハ仰キ翼羽乍チ翕ヒ乍チ張リ趾屈伸自在ニシテ凡テ六様ノ變化ヲ爲ス弾機螺條
ノ装置複雑ナラスシテ極メテ宛滑ナリ是レ其妙技三等賞ヲ得ル所以ナリ」
・岡本鉦太郎製 伊藤庄八出品
鉄蟹香合
鉄鬼(ママ)虫雌雄
鉄蜻蛉
銕蟷螂雌雄
『第四回内国勧業博覧会出品部類目録 第1部 工業 下』
明治32年(1899)
東京彫工会第十四回彫刻競技会
・高石重義
「鐵製延縮龍之置物」「鐵製伸縮龍」(二種の表記が見られる)
銅賞牌
『近代日本アート・カタログ・コレクション 第2期 086
東京彫工会 第2巻』(東京文化財研究所編)による。
官報 1899年10月31日 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2948191/3
(受賞者名にその名が見られる)
明治33年(1900)
パリ万国博覧会
・板尾清春(板尾新次郎)
鸚鵡置物
『美術画報 臨時増刊 巴里博覧会出品組合製作品』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849706/145
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849706/144
「銀の鍛成にして、屈伸運動自在なり、餌壺及び棲(とま)り木の装飾には細巧
の象嵌を施す」
パリ万国博覧会公式カタログ “Catalogue général officiel, Exposition
internationale universelle de 1900” に記載(第十五部第九十四類)。
Itao (Kiyoharu), à Osaka. - Argent repoussé : Perroquet.
http://cnum.cnam.fr/CGI/fpage.cgi?12XAE54.17/145/100/831/16/830
第十五部第九十七類には鉄製の孔雀の出品も確認できる。
Itao (Kiyoharu), à Osaka. - Fer incrusté d’or : Paon.
http://cnum.cnam.fr/CGI/fpage.cgi?12XAE54.17/318/100/831/16/830
*”Verslag van den Directeur … Rijks Ethnographisch Museum
(Netherlands) - 1900"の記述によれば東京彫工会第十四回彫刻競技会にて
銅賞牌を授与された高石重義作の龍も出品されたとみられる。(blog記事参照)。
明治36年 (1903)
東京美術学校「第一回美術祭」遺蹟展覧会
・明珍信家
伸縮龍 一個 矢吹秀一出品
各学科ごとに祭神を定め、遺蹟展覧会としてそれぞれの祭神に因んだ遺作や遺物が展示された。鍛金科の
祭神は明珍信家。
『風俗画報』(279号 東陽堂 1903年)掲載の山下重民「美術祭」による。
豊公遺物展覧会
・鐵製龍置物 明珍信政作 傳豊太閤ヨリ所贈 大利鹿蔵出品
『豊公遺物展覧会出品目録』(日本美術協会大阪支会 明治36年)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/781789/17
明治45年(1912)
展覧会等への出品ではないが、東京帝室博物館が作者本人から購入。
『MUSEUM 東京国立博物館美術誌 507号』所載 原田一敏「自在置物について」(東京国立博物館編 1993年)
・里見重義
「純銀製自在 龍」(箱書による)
里見重義の略歴については『東京帝室博物館美術工芸部目録. 第1区 金属品』
(東京帝室博物館編 大正7年)に記載あり。天保14年生、浅草三筋町住。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/936376/94
大正4年(1915)
大典記念京都博覧会
・高瀬虎吉
「鐵製海老置物」
銅賞
京都市編『大典記念京都博覧会報告』(京都市 大正5年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/944446/307
Christie’s オークションに出品されたこの作品と思われるものの箱書から
高瀬好山工房の宗明が製作したとみられる。
昭和4年(1929)
京都美術工芸品展覧会
・高瀬好山
「銀伊勢海老置物」「鐵製鯉置物」
『京都美術工芸品展覧会図録』(京都美術工芸品展覧会編 昭和5年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1187673/30
昭和9年(1934)
中沢岩太博士喜寿祝賀記念展覧会(京都、東京)
・高瀬好山
京都市公会堂東館 六月一日、二日、三日
「鐵河海老置物」「四分一蛇置物」「渡銀蟹文鎮」
東京商工奨励館 六月十一日、十二日、十三日
「鐵河海老置物」「四分一蛇置物」
『中沢岩太博士喜寿祝賀記念帖』(中沢岩太博士喜寿祝賀記念会 昭和10年)
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