「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」展が四月から東京藝術大学美術館で開催されますが、ボストン美術館蔵の高石重義作の2メートルほどもある龍自在置物が展示されるとのことで非常に楽しみです。
上の写真はボストン美術館で展示されたときのものですが、大胆な展示方法ですね。
こちらが美術館公式の作品紹介です。
http://www.mfa.org/collections/object/articulated-model-of-a-dragon-259465
高石重義については履歴など全くわかっていないようなのですが、パリ万国博覧会に出品された「多くの鉄製の部品で作られ可動するTakaishi Shigeyoshi の龍」を購入したとの記録がオランダ国立民族学博物館の報告書にありました。
英訳と原文は以下の通りです。
From "Verslag van den Directeur … Rijks Ethnographisch Museum (Netherlands) - 1900"
The period from 1 Oct. 1900 to 30 Sept. 1901.
Page 9.
English:
Purchased at the World Exhibition in Paris: a movable iron dragon composed of hundreds of scales, manufactured by Takaishi Shigeyoshi; this object, according to a label attached thereto, acquired award for an exhibition in Japan.
Original:
Aangekocht werden op de Wereldtentoonstelling te Parijs: een ijzeren beweegbare draak, uit honderden aan elkaar bevestigde schubben bestaande, vervaardigd door Takaishi Shigeyoshi; dit voorwerp heeft volgens een daarbij gevoegd etiket reeds op eene tentoonstelling in Japan eene bekroning verworven
1900年から1901年にかけての報告なのでパリ万国博覧会は1900年開催のものだと思われます。この出品作がボストン美術館のものと同一かはわかりませんが、その可能性もあるのではないかと考えられます。この龍は万博出品に先立って日本国内の展覧会での受賞もあったとの記述もあります。
(追記 高石重義の龍自在置物は東京彫工会彫刻競技会での受賞歴があることが判りました。詳細はこちら。)
上記は1905年の米国のオークションカタログの出品の記録です。
高石重義作の顎、舌、脚、爪、全身が可動する巨大な鉄製の龍とあります。
Length 8 feet とあるのでこれはボストン美術館の龍と同一である可能性が高そうです。ボストン美術館の龍は1960年代に寄贈されたものらしいので、以前の所有者はこのとき購入したのかもしれません。
以前鈴木長吉の龍自在置物についても書きましたが、それを紹介する新聞記事の龍のイラストが高石重義の龍と良く似ているのも興味深い点です。こちらの記事はパリ万博の前年の1899年、龍の大きさも同じ位のようです。どのような関連があるのでしょうか?
高瀬好山工房の宗義も2メートルを超える蛇や龍(画像上 故宮文物月刊 251号より)の自在置物を作っていますが、もし高石重義が同様の大きさの龍をパリ万国博覧会に出品していたとするとその影響を受けた可能性も考えられるのではないかと思います。
また新たな発見があるかもしれないので、四月の展覧会開催が待ち遠しいところです。
追記
「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」展記事はこちら。
高石重義の履歴などについて少し触れています。
コメントをお書きください