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自在置物  ·  04日 2月 2023

正阿弥勝義銘のムカデの自在置物 Articulated centipede signed Shoami Katsuyoshi

 岡山出身で後には京都で活動した明治の金工家、正阿弥勝義の銘があるムカデの自在置物が現存している可能性があることがわかった。

 

 1898年に英国で出版された日本美術コレクションのカタログにムカデの自在置物が記載されている。ムカデは鉄製で大きさは17 1⁄2インチと記されており、銘は正阿弥勝義となっている(Michael Tomkinson, A Japanese Collection Volume 2, London, Allen, 1898, p. 62.)。

https://digital-beta.staatsbibliothek-berlin.de/werkansicht?PPN=PPN780551354&PHYSID=PHYS_0176&DMDID=DMDLOG_0001

 

 

 このカタログは1878年から日本美術の収集を始めたという Michael Tomkinson (1841-1921) のコレクションのカタログで、その一大コレクションは多くの展示に貸し出されたが、彼の死後間もなくロンドンでオークションにかけられたという。

https://www.bada.org/features/empire-sun-laura-bordignon

 

 ムカデの自在置物は珍しく、一般に知られている作例は原田一敏「別冊緑青 vol. 11 自在置物」(マリア書房 2010年)に掲載されている個人蔵の作品一点のみであるが、英国ケントの Chiddingstone Castle のコレクションにも存在する。このコレクションは Chiddingstone Castle の所有者であった Denys Eyre Bower (1905-1977)により収集されたもので、日本美術のほかに仏教美術、古代エジプト美術なども含まれている。2005年に同コレクションの一部を借りてドイツで開催された展覧会の出品作品解説に、龍、鯉、蟹、孔雀、伊勢海老、昆虫とともに、ムカデの自在置物も確認できる(https://www.academia.edu/7748438/Aus_der_Wunderkammer_Chiddingstone_Castle)。

  "signed in the more sophisticated sosho,running, script and with a silver seal attached to the undersurface" という記述から、百足の下面には銀の銘板があることがわかるが、誰の銘であるかは明らかになっていない。

 

 以下のリンク先で、ムカデを含む自在置物が Chiddingstone Castle で実際に展示されている様子が見られる。

https://divertingjourneys.wordpress.com/2021/11/10/chiddingstone-kent-chiddingstone-castle-and-village/

https://www.flickr.com/photos/tedesco57/17051824455/

https://www.flickr.com/photos/tedesco57/17050351002/

https://www.flickr.com/photos/tedesco57/17051821585/

 

khttps://www.youtube.com/watch?v=6Wuu_LZD8vU&t=80s

 

 これらの写真などから Chiddingstone Castle のムカデの自在置物は、本物のムカデよりもかなり大きいことがわかり、Tomkinson コレクションのカタログに記されたムカデの大きさである17 1⁄2インチ(40cm余り)に近いように見受けられた。

 

 そこで、明らかになっていなかったムカデの銘について Chiddingstone Castle に問い合わせてみた。参考としてハリリ・コレクションの正阿弥勝義の作品の銘(Victor Harris, Japanese imperial craftsmen : Meiji art from the Khalili collection, London, British Museum Press, 1994 に掲載のもの)の画像を送った。現在、展示室を閉室中で、次の開室まで実際の作品での確認はできないとのことではあったが、以前に撮影された写真に正阿弥勝義の作品の銘によく似たものが確認できる、という返答があった。その写真はあまり鮮明ではなく、銘を正面から撮ったものではなかったが、確かにハリリ・コレクションの作品にもある「勝義」と読める銘板がみられる。

 

参考:清水三年坂美術館所蔵の茶入にある「勝義」の銘

https://www.flickr.com/photos/sushifactory/12247799284/in/album-72157640368761486/

 ムカデの大きさは41.7cmで、やはり大きさの点からも Michael Tomkinson 旧蔵のものと同一の可能性があるという見解であった。また、ムカデは含まれていなかったが、同コレクションの日本の美術品には、Michael Tomkinson の旧蔵品とわかっているものがいくつかあるという。Denys Eyre Bower は最晩年の1977年に来日した際、修理のためにこのムカデを携えて来たという記録も残っている、とのことである。

 

 正阿弥勝義は銀製の精巧な可動の骸骨も作っており、自在置物を作っていても不思議はないと思われる。Chiddingstone Castle のムカデは大きさこそ実物より大きいが、各部は非常に正確に作られている。もしこの作品が正阿弥勝義の作品だとすると、珍しいムカデをモチーフにしたことなども興味深い。これから作品の調査が進むことを期待したい。

tagPlaceholderカテゴリ: 自在置物, 正阿弥勝義

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